そして一年が経つ

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「そして目的地は北にずっと行ったところで、ガアプという村だよ。ここには僕たちエルフ族の村があってね、つまりは故郷ってやつさ。」 白弥さんが懐かしそうに地図の上をなぞっている。夜々さんも同じように、どこか昔を思い出しているような顔だった。 ふと、故郷に帰れるのかどうか不安になってしまう。やりたいことも、待っていてくれる人も無いけれど帰りたいと思ってしまうのは、やはりそこが故郷だからなのだろう。 「そうすると一度海を越えなきゃいけないですね。船を使うんですか?」 「いいや、海峡に巨大な移動用魔法陣が張ってあって、それを使って渡るんだよ。」 魔法陣とな。僕がまったく使えなかった魔法の一つではないか。しかも荷馬車を覆うことのできる魔法陣を作るとはとんでもない才能である。 基本的に魔法陣は土地から魔力を吸い上げ発動するため、術者の魔力を必要としない優れものだ。しかし製作は難しく、精密に書かなければならないため専門家のみが扱えるといわれる(人間間でだが)。
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