そして一年が経つ

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散々僕の心中を引っ掻き回したあの口から、さらに何が語られるのだろうか。正直今一番知りたい。人間に言っても大丈夫だったのに魔族でタブーになっているのは何でなんだろうか。 「それは秘密だにゃー。」 「へっ?」 あっけにとられて間抜けな声を上げる僕の横を、にゃははーと猫娘が通り過ぎて 「だってばれた方が面白いことになりそうだしにゃ。」 そう言って窓枠に手をかけて半分体を外に出した。 「大丈夫だにゃ。たとえばれたとしてもあなたに損はないはずだからにゃー。」 それを最後に窓の外に飛び出してしまった。 慌てて窓から外を見たが、彼女の姿を見つけ出すことができなかった。代わりに下で騒いでいた白弥さんの後ろに夜々さんがに近づいてくのが見えた。 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。正体不明の来客があった以外は今日も平穏である。 いや、彼女は正体不明ではなくちゃんと名乗っていったのだ。次に会ったときは僕から呼びかけてみることにしよう。
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