『木枯らしの季節』

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「お疲れ様でした」 今日一日の仕事を終え、私はオフィスを出ていく。 エレベーターに乗り込み一階のボタンを押すと、扉がゆっくりと閉まった。 「ふう……」 エレベーターの中は私一人。思わず溜め息が漏れる。 (今日も疲れたなあ~) そんなことを思っていると、エレベーターは一階に到着し扉が開く。 私は建物の出口に向かい、ガラス戸を押し開ける。 ―――ヒュ~~ 「さむっ!」 思わず首をすくめる。 そういえば、昨日「木枯らし1号」が吹いたとニュースで言っていた。 私はコートの襟を立てると、寒空の中を歩き始めた。 街のイルミネーションは、早くもクリスマス一色になっている。 (クリスマスかあ。今年も独りで迎えるのかな?) 私はぼんやりとそんなことを考えた。 去年の今頃。私は2年付き合った彼に突然別れ話を切り出された。 いや、〝突然〟では無かったかもしれない。その少し前から予兆はあった。 話し掛けても「うん」と生返事するばかりで、私の話をちゃんと聞いてはいないようだった。 別れた時のことを思い出し、また一つ溜め息がこぼれる。 私の心に木枯らしが吹き荒れたあの日も、こんな冷たい風の吹く夜だった……。
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