.ニ / 告別。

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 詰まるところ、政治にも軍部の上層部の意見は多少反映される。 “何で戦争なんかするんだろうな” “香助も大きくなったらわかるよ” “誰かが死ねば、誰かが泣くのに” “本当は、普通の飛行機を造りたかったんだ” “戦争なんか、するべきじゃないんだ” 「“あの話”って有効ですか? 今も」 「“あの話”?」 「……」 “こーちゃんもいっしょになろうね!” 僕は、たとえ事故でも、殺す気も殺される気も、無い。 「士官候補コースの話です」 「……おい、鳴海」 「お受けしたいと思います。もうすぐ夏休みですから、切り替えるには限りが良いですね」 「本気か」 「はい」  渋る教官に、ご自身が言っていたことでしょう、と突っ込みたくなって苦笑する。 「手続き大変でしょうけどよろしくお願いします」 「それは良いんだが……お前だって中途編入で面倒だろうに」 「確かに。でも、良いんです」  面倒なことは僕も死ぬ程嫌いだ。何も無いのが一番だ。僕にとっても誰にとっても。  この国にとってだって、そうだろう?  僕は、身近な誰かが消えるのも。  既知の誰かが泣くのも真っ平だ。 「決めたんです」 《世界》を変えるとか、大それたことを言いも、しもしない。僕にそこまでの力が有ると思えないし。  勝手に、外の国は外の国で戦争すれば良いとか考えていた。現在だってこの辺は変わっていない。  そうでも、火の粉が近辺に掛かるのはゆるせない。  最低だろう? 知っているよ。  久保田教官が『悪の幹部』って言ったのは強ち間違いじゃないかもしれない。   
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