.ヨン / 前哨。

2/17
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/204ページ
   戦術カリキュラム。まぁ、名前のまんまだ。頭脳での模擬戦と言うか、シミュレーションだ。こうこうこう言う戦況でこう言った軍備で、さぁどうする、攻略せよ、って感じの。教官が出した戦況モデルに対して、前日行われた普通科の模擬戦を元に作成された、クラス別の戦績データを渡され三人以上四人まででチームを組み攻略作戦を立てる。ミーティングタイムのあとコンピュータを使い実際シミュレートするのだ。 「今日は対抗式か」  対抗式は要するに戦略を競い合うチーム戦だ。チーム別対抗戦。Aチームの戦略対Bチームの戦略って言う。戦術カリキュラムの授業は普通科の模擬戦授業といっしょで二クラス合同の場合も在る。今日は一つ挟んで隣のクラスと合同だった。 「あのクラスはウチと毎回順位が接戦だからな。今日の戦果は学年で注目しているだろう」  シミュレート結果は戦果として廊下に成績順みたいに貼り出される。椎名の、クラスが色めき立っていることへの解説に僕はへぇ、と気の無い返事をした。僕のチームメイトは椎名、邑久ともう一人。名前も思い出せない誰か。だいたいこの定番メンバーに一人プラスαと言う。αは日によって変わる。僕が加わっての初日に、溢(あぶ)れている人に声を掛けたのが始まりだ。僕は単純に一人で困っていた人間に他意も無く「入れば」と言っただけ。コレがいけなかった。あのとき、邑久と椎名が笑っていた理由が今ならわかる。  あの日から、しばらくチームを組むのが遅くなったのだ。昼休み中に決めなくてはならないのに、チャイムが鳴っても決まらないことも在った。椎名曰く「上位者のチームに入りたいのはみんな同じってことさ」成績に響く訳だし出来るだけ加点が見込めるところへ行きたい、そう言う人間と組みたい。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!