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倉中もタッチして見れば異常なパラメータを確認出来ただろう。成績のランクはA、B、C、D、E、F、と在りAが最も良くFが最も悪い。特Aはランクにも入らない程に最優秀ってことだ。
「あー、見落としたなぁ。ケアレスミスだわっ」
最近香助に任せっ切りだからかしら。邑久がぼやく。普通科に特Aがいること自体おかしいことなんだけどね。「僕も大して見ていないよ」僕がぽそり返した。「え、」邑久が何らか続ける前に僕は教室へそそくさと逃げた。
だって、僕はデータを全部チェックする必要性は無かった。僕にとって既知の事柄なんだから。
僕たちは順当に勝ち進んで、順位も着々と上がって行った。僕は首位とか興味無かったけども必然的に候補に挙がらざるを得ない。
そして最終日。本日の題目は「掃討戦」。先日は「撃退戦」だった。掃討と制圧は一見似ているようでまったく違う。危険分子、不安分子を残らず排除することを掃討、暴徒などを力で抑え付けることを制圧と言う。今日やるのは掃討だ。完全なる排除。ふむ。僕はデータを流し読みして、駒のデータで目を疑い二度見した。……嘘だろう?
「よりにもよって……」
掃討戦で使う駒のデータ、参考先は都香のクラスだった。
結果として、僕たちは首位に輝いた。だけれど、以前邑久が言っていた『扱いづらい』発言を僕は身を以て知ってしまった。今日びシミュレーションシステムがよく出来ていることは認めよう。認めても良いけど、何も性格ってか行動パターンまで真似なくて良いんじゃないかな。
都香の駒は扱いづらかった。と言うか独断専行が多い。率先して動く駒。……指示する人間の気持ちも考えてほしい。どんなに都香が強くても、これじゃ指揮官は毎度胃を痛める羽目になる。
都香の上官にはなりたくないな。本気で思う。アイツはサポートする分には嘆息量産機だが上司には病欠量産機になりそうだ。それでも、普通科ではアイツは英雄だからね。貼り出されている戦果を見ていた僕はふと、横に目をやった。
佐東くんがうれしそうに顔を赤くしていた。静かに、興奮しているようだ。佐東くんは初めて良い成績を収めたらしいから、心からよろこんでいるのだろう。僕は複雑だけれども。
佐東くんは、正直莫迦じゃなかった。気後れしていると言うか、少々押しに弱いところが在るだけで、視野は邑久、椎名より広い。先読みの精度も悪くない。
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