.ヨン / 前哨。

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 僕は脳内で一人奸計を巡らせていた。  邑久と椎名は僕の懸念をきっちり見越していたようだ。二人の配慮に僕も佐東くんもこのあとも平穏に日常を過ごせた。  が、そうそう上手く事は運ばないものだ。  明くる日、次の授業に向けて教室を移動中、僕は遭遇してしまった。 「よぉ」 「……どうも」  ここは、移動中だけど士官候補コースの校舎だよね? 未だに。どうして、この人たちがいるんだろうな。隣にいた邑久の眉が片方跳ねる。椎名は無表情。椎名の無表情は冷淡に見えて好きじゃないんだけどなぁ。 「お前もまさか士官候補とはなぁ」 「……。僕も、先輩方が士官候補だと思いませんでした。作業着でしたし……今日も」  僕はにこっと微かに笑んだ。愛想笑いも疲れて好きじゃないよ。僕の笑みをどう取ったか相手もにやにやと笑い返して来た。  僕の前、いやらしい顔面を晒していたのは、いつかの、羽柴先輩に暴行を加えていた加害者集団だった。 【A continuation is updated from 66 pages on 6/4.  ───続きは6月4日66ページから。】
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