.ヨン / 前哨。

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 危なっかしいのが一人いて、味方も作るけど敵も作るから僕はと言えばそっち優先だったしなぁ。形振り構わず動くから、都香は。 「香助って、基本敵を作らないけど、だからって別に敵を作ることに関して特に忌避してるって訳でも無いのよね。出来たら仕方ない、排除しよう、みたいなの」  邑久がつまらなそうに頬杖を突いて僕の分析をするが僕は「そう? 僕事なかれ主義だけどなぁ」と笑って置いた。嘘じゃない。面倒事は嫌いだ。まぁでも。 「邪魔するなら、退けるだけだよね」  僕は、面倒事は嫌いだ。多分僕の性格のせいだろう。細かいからなぁ、僕。あらゆる可能性は潰さないと気が済まない。一目で穴が開いているようなプランも、絶対塞ぐための受け皿を用意している。てか、わざと穴は開けてたりもする。そこにしか穴が無ければそこに行くだろう? 砂だって水だって人だって。僕は手間を惜しまないから。  ただし、自分までこの労力は回らないんだよね。気にしないものなぁ。自分が火の粉を被る分には。僕は己を省みていた。 「……ねぇ」  僕が物思いに沈んでいると邑久が話し掛けて来る。僕は空中に視点を浮かせていたので邑久へ戻した。僕を見詰めていた邑久の眼差しは結構真剣だった。僕が耳を傾けていると邑久は常の軽い雰囲気を引っ込めたまま喋り出した。 「アイツら、かなりウザいのよ。私のことも実は尾を引いているの。今、標的は逸れてるから良いんだけど」  尾を引いている、てことは要するに現在も継続中ってことだ。標的は逸れているってどう言うことだろうか。今は噂の風紀委員、斎藤さんだっけ? がなっているとか? 邑久のくれる情報を整理しつつ余計な発言はしないで聞き続けた。 「マジな話ね。私もまだ手を焼いてるの。このままで良いとも思ってないんだけど……私じゃあ、現今如何とも出来ないし。関わるなとも口酸っぱく言い付けられているし。……香助も最悪、何かで拗れる前に相談したほうが良いよ。風紀、……でも良いんだけど、」  滔々と僕に語る邑久の口調が淀んだ。僕は首を傾げた。 「斎藤はねぇ……香助は、ちょーっと苦手な人種かもね」  暑苦しいって言うか、熱血って言うか、良いヤツなんだけど。邑久の微苦笑に、うわー、間違いない、僕は避けたいタイプだ。そうして、僕が長くない付き合い上で掌握している邑久も得意じゃないだろう。椎名は……上手く流せそう、かな。
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