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あの集団を注意して、僕と邑久はなるべくあれから一人になるのを避けた。今にして思えば、邑久が常日頃椎名といながら二人の間に一切の甘いものが無かったのは、成績上位者で仲間意識が在っただけでなく二人が協力関係に在ったからに他ならず。それもまた生贄、邑久の彼氏役を探していたことから周知の事実だった訳だが。
「まったくさ。女の子の友達は離れて行くし良い迷惑よ」
「仕方ないよ。女の子に何か在ったら事だもの」
邑久が愚痴りたいのもわかる。邑久はあの集団に狙われたせいで女の友人が周辺にいなかったのだ。てっきり僕は女子には嫌われているのかと思った。椎名、モテそうだし。その椎名と四六時中いるのだから、やっかまれてもおかしくはないと。
実際は身の保障のため、女子と話が付いていた。教室でも極力女子といないのは、アイツらに目を付けられてお膳立てしろとか、無理強いされるのを防ぐため。頭の悪い輩しかいないようだし、何を仕出かすかわかったものじゃない。場合によっては脅すために……、なんてことも有り得る。
まぁ、成績とか体面を気にするところは士官候補生らしく在るようで、滅多なことはしないだろうが。コレしか無い、などと意味不明な思考回路はしていそうだから気を付けるに越したことは無いだろう。
「ああっ、ムカ付くううぅぅぅっ! 何で私や香助がこんなことしてんのよ! 何か悪いことしたっ?」
「……強いて挙げるなら目に止まったことかな」
「何それ! 知らないし!」
喚く邑久を横目に僕も知らないよ、と心の中で返した。僕はぶっちゃけ都香のためだけど。本意は無関係を貫きたかった。けど、あの無謀極まりない無策で突っ込む特攻気性が、碌な事態を招かないのを僕は身を以て知っている。多分、僕があそこで口を挟まなければ都香も羽柴先輩も最悪の結果になっていた。あの集団、紙のお勉強は出来るのかもしれない。腐っても士官候補なので。だがそれだけじゃ士官候補には到底なれない。悪知恵が働くのかもとも思うが、僕の予想は別に在る。
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