意図して訪れた平和

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かつて、全世界を支配していた一人の男がいたそうだ。 その男は膨大にして凶悪な力を持ち、誰一人逆らう者はいなかったという。 人は、その者を魔王と呼んだ。 しかしある時、凶悪な力を振りかざし、世界を我が物にしていた魔王を倒そうと立ち上がった者がいた。 人は、その者を勇者と呼んだ。 勇者は魔王を倒すべく、選りすぐりの仲間とともに魔王が住む城へ乗り込み、恐ろしい手下たちを次々と撃破し、ついに魔王に辿り着いた。 勇者は全ての力を用いて強大な力を振るう魔王と戦い、そして勝った。 勇者が持つ全ての『魔』を切り裂く宝剣によって切り裂かれた魔王は深い谷の底へと叩き落とされ、さらにその上から巨大な岩石で谷を潰され、完全に閉じ込められた。仮に生きていたとしても、もう二度と出られないようにと。 ―――こうして、世界を恐怖で満たしていた魔王が消え、世界は歓喜に満ち溢れた。 それから1年後、魔王がいなくなった世界は平和となり、何に怯える事もない平穏な日常を過ごしていた。 「平和、ねぇ。まっ、悪くないんじゃないか?恐ろしい『魔王さま』は、今も谷の奥底で閉じ込められてるんだしな」
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