念願の高校生

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右手は振り切って間に合わない。左手は利き手じゃないから明後日の方向に飛んでっちまいそうだ。 ……となれば、 (仕方ないか) 「――なッ…!?」 体を倒し、捻り、力を溜めて。 飛来する魔力体を、右足でもってお返ししてやる――ッ! 「っしょぉッ!!」 速度は投げるよりも速い。これで決めるつもりでやったんだ、軌道もちゃんと田上にはギリギリ当たらない場所を狙って蹴ったから当たる心配はない。 (これで終わり―――っ?) 蹴り終わった体勢で宙に浮いていた、その時だ。 俺の目はそれを見た。 田上ではない。刀野さんでも福吉先生でも他のクラスメイトでもない。 校舎。学生たちが授業をしている建物。その天辺。 そこに突き刺さり、風にはためいて存在を誇示している、一つの大きな旗があった。 (………あの旗は) 学校の校章が書かれているのではない。学校なんかとは全く関係のない、別の紋章。 (……あの、マークは…) ………『意識が完全にそれに集中してしまった』。言い訳としてはもうこれしかないだろう。 いや、油断もあったかもしれないな。 まさか、あの高速の魔力体を受け止めて、返してくるとは思いもしていなかったのが原因か。 それによって――反応が完璧に遅れてしまった。
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