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気づけば目と鼻の先にまで迫っていた青白い魔力体に俺の魔力をぶち当て、一瞬にして漆黒に染め上げて―――殴り付ける。
黒い粒子となって散らばり、地面に触れる前に消滅していく魔力体。俺は拳を振り切った体勢のまま心中で呟いた。
(しまった…)
冷や汗が額から頬、顎先へと伝い落ちる感覚にさえ気づかないまま、辺りへと目だけを向ける。
全員が全員、俺を見たまま硬直していた。例外なく、ポカンとした顔で立ち尽くしている。
そんな中、微かに声が聞こえた。刀野さんの声だ。
「く………黒い、魔力…?」
基本、魔力に色なんて物はない。炎系の魔法を使おうとすれば赤くなり、水系魔法なら青。無系統魔法ならば白などと、発動時に色がついたりする。
ちなみに、黒い魔力を元にする魔法はと言うと……闇になる。
使える人間はごく稀で、基本的に闇系の黒魔力を使えるのは上級の魔族くらいのもの。
黒魔法を使う最たる例と言えば、やはりというかなんというか………。
「《魔王》と……同じ、魔法…」
まぁ、魔王だからね、俺。使う魔法が同じなのは当然なんだけどね。
しかしまずい、これでは変な疑惑を持たれかねん。魔王などとは思われないにしろ、注目を集めてしまう事になるかもしれない。
くそ、咄嗟だったとは言え、普通の魔法使えばよかったっ…!
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