念願の高校生

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しかし、使っちまったのは事実。目撃者も多数で、とぼけるのも不可能だ。誤魔化すのも無理。となれば………。 「い、いやー、悪い悪い」 頭をかき、精一杯の作り笑顔でもって言葉を続けた。 「驚いて"つい一番得意"な魔法を使って壊しちまった。アハハー」 ここはあえて誤魔化さず、乗っかる。否定して怪しまれるなら肯定してしまえばいい。 「……黒魔法が、一番得意だと?」 田上が驚いた顔のまま口を開いた。気づいてないみたいだけど結構面白い顔してるぞお前。 …と、まずはこの状況をなんとかしないとな…。 「刀野さんが言ったように、黒魔法は魔王が得意な魔法だ。だから俺も、黒魔法を勉強したんだ」 「…なんのために?」 「黒魔法の弱点を探そうと思ってね。実際に使ってみれば魔法の効果とか使用方法とかいろいろわかると思って。俺も魔王を倒したかったから、勇者たちに少しでも助力出来ないかなーって」 我ながら素晴らしい理由だ。"魔王"と"勇者"、この二つの単語を使っただけでも十分な理由になっただろうし、疑われる余地もないはず…これでどうだ? 「……な、なるほどな」 田上が頷きながら呟いた。田上の他も誰も口を開かない。よーし逃れたぞー。
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