念願の高校生

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ちょっとしたいざこざも終わり、福吉先生の授業が再開された。そこからは六組からの『自分ら格上ですよアピール』もすっかり無くなって平和に授業が進んでいった。 ――ところがどっこい、肝心のわたくしめの心境はちっとも平和ではないのでありますよ。 魔法技の授業が終わって校舎へと戻る最中に、俺は刀野さんを呼び止めた。 「どうした?」 「一つ質問してもいい?」 「?」 俺は右手の人差し指を上に向け、刀野さんはその先に顔を上げた。 指の先。刀野さんの目線の先は、校舎の天辺。 そこに突き刺さり、派手にはためく一つの旗。 「"あれ"、なんで学校にささってんの?」 二羽の黄金の鷲が一本の剣を掴んだ―――『勇者』の紋章が描かれた旗。 「な、なんでって…」 刀野さんは一般的な常識について聞かれた時のような顔をした。 そのまま言う。 「"勇者のパーティーがこの学校に通っているからだが"」 「…………」 やっぱり、か。 普通の学校にわざわざ勇者の旗をさす理由は……まぁ、ただ単に『世界を救った英雄の象徴』を学校にさしてあるだけとも考えてはいたんだが、それなら"他の学校もさしてなくてはおかしいだろう"。 (いくつかの学校を調べといてよかったぜ) パキッパキン、と指から音が鳴り、それを聞き取った刀野さんが驚いたような表情を浮かべる。 「そうか…」 「ま、真代…?」 「ここには、勇者の仲間がいるのか…」 旗を睨んで口角を吊り上げる。 (学園ラブコメディを望んでたんだが、まさかの展開だな…)
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