念願の高校生

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周りには俺と同じ制服を来た生徒たちが友達と話したり、イヤホンで音楽を聞いたりしている。ごく普通であろうその光景は、俺には輝いて見えた。 この光景はまさしく、俺が長らく愛読していた学園ラブコメ小説の主人公が見ているありふれた光景で、ずっと憧れていた光景。 この光景が見られるという事は、ずっと通ってみたかった学校の、一生徒になったという事。 くーっ!今にも大声でこの気持ちを叫びたいぜー! 一人でワクワクウキウキし、今一度学生になったという実感をただの光景に感じていた、その時だ。 「うわっ!危ない、よけろ!」 「?」 何やら慌てた声が聞こえたのでそちらに視線を向けてみる。 すると、バスケットボールほどの大きさはあるであろう光の塊が、一直線に俺の方に飛んできていた。 光の玉の奥には慌ててこっちに駆けてくる男子生徒が二人見える。あの二人のどっちかが放った魔力の塊だろう。 塊と俺の間には誰も生徒はいない。しかし塊と俺の対角線上、つまり俺の後ろには生徒が何人かいる。 仕方ない、俺が受け止めるか、と、左の掌を広げ、腕を上げようとした直後、誰かが俺と魔力の塊の間に割り込んできた。 その人物は、右手に持つ日本刀を頭上に振りかぶって、 「せいやッ!」 迫る魔力の塊を一刀両断した。
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