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「…恵ありがとう」
「…どうしてありがとう?」
俺は今、恵を抱いているから顔はわからない。
だけど…声で驚いているのはわかる。
「産まれてきてくれたからだよ」
「…う…う…ふっ。…ぁ…う」
「産まれてきてくれてありがとう、恵」
「…あ…りが…とう」
恵。
恵はね、いらない子じゃないよ。
他の子より、親から愛されなかったかもしれない。
だけど…俺は恵の事が好きだから。
流石に声に出して言えなかったけど…。
「恵?」
泣き声が聞こえなくなったから、恵を見てみると規則的な音を立てて、寝ていた。
…落ち着いて良かった。
俺は抱いている姿勢から、頭を腕に乗せる姿勢へ変えた。
そして、頭を優しく撫でる。
「恵…好きじゃなくて、大好きかも」
聞こえるか聞こえない程度の声で、呟いた。
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