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(うっわぁ!まじで飛んでる!)
皆がこっちを見て固まってるなんて露知らず、魔力でできた鳥が持っているような翼を羽ばたかせ、ご機嫌な楼。
無理もない。
楼の、”魔法が使えたらやってみたいことランキング”の上位に食い込んでいる、空を飛ぶことを、今、実現できたのだ。
修行の際も、魔法の基礎知識や魔法の仕方、魔力の練り上げ方、魔法の作り方、はたまた体を鍛えるなんてこともしてきた。
しかし、魔力でこんなもの作ったこともなかったし、
魔法で宙に浮くこともしたが、やはり、”飛ぶ”とは違うようだ。
現に楼は、あまりの感動で視線に気づく気配もない。
そんな彼の背中から生えているように見える翼は、動かすたびに、ひと羽ひと羽が太陽の光や見る角度によって灰色から白や黒色に変わり、時間がたてばたつほど、戦士たちの目を奪っている。
そんな摩訶不思議な翼を数回羽ばたかせ、満足したのか、楼が周りに目を向けた。
そして、絶句した。
何千何万、それ以上の目がこっちを見ていたのである。
人目に慣れていない楼が絶句するのも無理はない。
普通の人なら、こんな状況になれば緊張で動けなくなるだろう。
楼が不思議と緊張をしていないのは、翼のおかげかもしれない。
(目がありすぎて、気持ち悪い。)
人の目には酔いそうだが。
(まぁ、とりあえず地上に降りるか。)
下には、一定の範囲に開けた場所があった。
どうやら丁度、『英雄』と『魔王』が殺り合おうとしていたらしい。
両側にはそれぞれ、周りと一見変わった見たところ”ボスです”感が溢れる者がいたから、間違いはないだろう。
英雄は剣を、魔王は魔法を放とうとしていたのか相手に手の平を向け、楼に視線を向けたまま固まっている。
(攻撃し合う雰囲気じゃないし、大丈夫だよな)
ふわりと翼を広げ、楼は地に片足をつけた。
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