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春季都野球大会は終盤を迎えていた。秋葉高は強運もあり、あれよあれよという間に決勝戦に勝ち進んでいた。決勝は試合場が神宮第二球場に移り、試合開始は十二時半からだった。秋葉高の対戦相手は強豪の朝田高校だった。
晶子たちチアガールは三十分前に球場に到着していた。秋葉高は後攻めで、一塁側に陣取っていた。さすがに、決勝まで進出したとあって、観客席には秋葉高の生徒や野球部OBなどの関係者が大勢詰め掛けていた。
「なんか、今日は盛り上がりそうね」
裾の短い新しいユニフォームを着た晶子が朋美に言った。
「そうね、まさか決勝まで来るとは思ってなかったわ。でも、これで学校での注目度も上がったから、ブラバンを引っ張り出すのは時間の問題よ」
「そうよ、見てよ、あっちの応援団。チアガールも人数多いし、ブラバンも駆り出して威勢がいいわ」
リーダーの中山和美が言った。
「でも、今日勝てばわたしたち新聞に載るかも」
笑顔のきれいな沢口舞が言った。
「もう、こうなったら何が何でも勝ってもらわないとね。みんな気合いを入れて行きましょう」
和美の掛け声で、チアガールは気勢をあげた。その時、学生服に白鉢巻、白手袋のいかつい男子生徒が三人やってきた。
「オッス。俺たち応援部だけど、野球部の応援を一緒にやらせてもらいたいんだけど、責任者は誰?」
小柄だが野太い声の男子生徒がチアガールを見回しながら尋ねた。野球部ベンチからちょど戻ってきたイザベラが応対した。
「わたしです。イザベラといいます。野球部のマネージャーもやっていますね」
「そう、それは好都合だ。俺は応援部部長で三年の橋本卓、この二人は二年生の小林正一と有村健。俺たち、応援部だけどいままで野球部が弱かったので、活躍する機会がなくて廃部寸前に追い込まれていたんだ。それに、君たちチアガールの活躍に気押されて、それで俺たちはつい出遅れてしまったんだが、ここでぜひ応援部の存在感を示したいんだ」
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