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俺が通されたのは、真ん中を透明な壁で分断された部屋だった。
調度品といえるものは何一つなく、パイプ椅子が壁を間に挟んで向かい合うように置かれている以外には、部屋の隅に簡素な机があるだけだ。
壁はコンクリートの打ちっぱなしで、目を凝らしてよく見てみると、ところどころヒビが入っている。部屋を照らす蛍光灯は、部屋全体を照らすには不十分に思えた。弱い光が頼りない。
パイプ椅子は俺が座ると音をたてた。
透明な壁の向こう側はこちら側とほとんど変わらない様子だが、俺にはまるで別世界に見える。俺は向こう側から切り離された存在なのだ。そう思えた。
青い制服を着た男が部屋に入って来た。一言も発さないまま、机の前に座る。
男の入室が合図だったかのように、壁の向こう側の扉が開いた。
隙間から一筋の光が漏れた。ただの光のはずなのに、俺には懐かしく思えた。温かく感じた。つい先程までは、俺も向こう側の世界にいたのだ。
俺は向こう側に戻る事ができるのだろうか。
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