第1章

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 教室に入るとクラスメイトが手を挙げてサインを送ってきた。挨拶の代わりだ。俺はそれに答えると自分の席に向かう。  学生バックは机に置くと鈍い音を発した。中に教科書や参考書が大量に入っているのが原因だ。  教科書をバックから出して机に詰めていると、緑川香が近寄ってきた。 「おはよう、翔一郎くん」  彼女は毎朝声を掛けてくる。三年生になってから初めて同じクラスになったのだが、新学年の始まりから親しげに話しかけてきたのだった。下校時には一緒に帰ることが多い。  そんな彼女は、普段はまるで太陽のような明るい雰囲気を纏っているのだが、今日は何故だか表情に翳りが見えた。
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