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「見ればわかるだろう」
捕まっている人間に房内の掃除をやらせるのか。どうやらそれが、ここのルールらしい。
今後何日間ここにいなければならないのかわからない。隅々まで掃き清めた。
七時には朝食が来た。仕出しの弁当箱らしく、中身は米より麦の多いゴハンに、具の少ない味噌汁、紙のように薄い鮭に、ほんの少しのほうれん草のおひたしだ。これで満腹になるわけがない。十分もかからずに食べきった。
それからしばらくは、やはり事件のことを考えていた。
白木先生の遺体写真は、人の死に顔をみるのが初めてではないが衝撃的だった。
初めて人の死に直面したのは昨年の冬だった。父方の祖母が亡くなったのだった。年齢は八十七だったと聞いた。病状は詳しく聞いていないが、実の息子、つまり俺の親父は全身に毒が回っているようなものだったと教えてくれた。
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