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晩年の祖母がどのような苦痛を味わっていたのかは想像するしかない。しかし、通夜の日に見た、棺桶に入った祖母の顔は安らかなものだった。それを見た参列者が口々に「いいお顔をされていますね」と言って去って行った。
白木慶子の場合はどうだったろうか。体の全体を映した写真はなんとか見れた。だが顔のみを大きく映した写真を見た時には、すぐに顔を背けてしまっていた。だからあまりうまく思い出せない。
目は閉じていたはずだ。開いていれば見たのは一瞬でも必ず印象に残るはずだからだ。人間の眼からは何らかのエネルギーが放たれているものだ。苦悶の表情を浮かべていたのは間違いないだろう。
彼女の通夜、告別式はたぶん今日と明日だろう。本来なら俺も出席しているはずだったのに。
凶器になぜ俺の指紋があるのか。あれさえなければ俺が捕まることはなかっただろう。
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