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先程の先導役の警官は、一言も発さないまま机の前に座る。
警官の入室が合図だったかのように、壁の向こう側の扉が開いた。
隙間から一筋の光が漏れた。
「親父……」
扉の向こうから現れたのは親父だった。俺の顔を見ると、一瞬ドアノブを握ったまま硬直した。
「翔一郎……」
俺の名前を呼ぶ声にはいつもの力強さがまるでなかった。こちらから視線をはずさないまま、透明な壁の前まで進み出てきた。
親父はいつも出勤する時と同じスーツを着ている。ネクタイははずしてボタンも一つ取っていた。
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