第2章

26/46
前へ
/271ページ
次へ
 先程の先導役の警官は、一言も発さないまま机の前に座る。  警官の入室が合図だったかのように、壁の向こう側の扉が開いた。  隙間から一筋の光が漏れた。 「親父……」  扉の向こうから現れたのは親父だった。俺の顔を見ると、一瞬ドアノブを握ったまま硬直した。 「翔一郎……」  俺の名前を呼ぶ声にはいつもの力強さがまるでなかった。こちらから視線をはずさないまま、透明な壁の前まで進み出てきた。  親父はいつも出勤する時と同じスーツを着ている。ネクタイははずしてボタンも一つ取っていた。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加