第1章

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「おはよう。元気がないね」 「え、そうかな。いつも通りだよ」  まるで取り繕うように言うと、席を離れていった。  おかしい。いつもなら担任が来るまで彼女の話を聞かされる。何かあったようだけど、静かに授業の準備ができるので放っておくことにした。  そのうちに担任がやってきた。担任もまた普段とは雰囲気が違っていた。どのようにと聞かれたら何ともいいようがないのだけれど、顔が引きつっているような気がしたのだ。 「みんな、静かに。落ち着いて聞いてくれ」  先生のただならぬ様子に、教室は一瞬で静まり返った。廊下の方からも何一つ物音がしない。きっとほかのクラスも同じような雰囲気なのだろうと漠然と思った。あまりの静かさに、俺のすぐ左隣りの窓の外から風の吹く音が聞こえてくるほどだ。
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