第1章

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2 米国・フォートデトリック基地  完全防菌の軍人たちが死体と生存者、狂人鬼と<死神>を見分け黙々と収容していった。  生存者は狂人鬼の方が多く、9人は重傷ながらも命に別状なかった。<死神>に関しては今のところ生きているのは7人だけで、全員重傷で治療中だ。死体は20体ちかく。  そんな中、二人だけは防菌服を着ず軽装だった。ユージとアレックスだ。 「もう少し殺さず連れて来られなかったのか? これじゃあ事情聴取も無理だ」  ヤレヤレ……と頭を叩くアレックス。 「無茶をいうな。俺一人だぞ? そんな上手に殺さず半殺しなんて余裕あるか」  ユージもユージで面白くなさそうに答える。その言葉を聞き、アレックスはため息をつくだけでそれ以上は文句も愚痴もなかった。 実は内心呆れ返っていた、ユージの強さにだ。 僅か30分ほどの時間、圧倒的な数を前に防弾着もなく無傷で、これだけを回収し疲れ一つ見えない体力……アレックスも戦闘力には自信はあるがこの半分もいかないだろう。  丁度40分前、<死神>、狂人鬼が転送で着き、アレックスとベネットが行動を始めた時、ユージもJOLJUと共に戻ってきた。すでに述べたがJOLJUのテレポートはユージ(とサクラ)だけは基本日数回数関係なく使える。ユージが着替えているうちにJOLJUが<死神>たちの仮面を見て、その場で鍵を作り仮面を外し、狂人鬼には手早く鎮静させていった。  そして検分するためユージとアレックスだけがこの部屋に入った。この二人は強い抗ウイルス体質で防護服の必要がない。 「SAAのウイルス分析部門を手配しているが、分析結果の詳細が分かるまで半日はかかるだろう。治療薬となるともっとかかる」 「そうだろうな」 「武器から割り出すのも時間がかかる。やはり手掛りは……」  そういいアレックスは<死神>の死体のほうを見つめた。 「CIAの線から行くのが確実か」  <死神>の中に二人、白人が混じっていた。ベネットが確認したところCIAの特殊潜入諜報員であることが判明した。ベネットのほうは別室で極東活動中の潜入諜報員と連絡を取っているところだ。  ユージとアレックスは特別隔離室を出た。  ユージはこの後また東京に戻り、黒神グループ関係を調査する予定だ。黒神の蝮が今頃自社の幹部会議を行い<社内のスケープゴート>を決め、その裏付けや証拠を集めている頃だろう。
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