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脳裏に忌々しい光景が広がる。布団の中は汗でじっとりと湿っていた。
「陸、ねぇ、陸」
涼やかな低音が私を我に返し、静かに布団が持ち上げられる。振り返らず、微動だにしない私の体が、急速に冷えていく。
「一緒に寝ていい?汗、拭いたげる」
一度部屋から出て、濡れたタオルを持って戻ってくる海。髪をどかし首筋から肩甲骨を優しく拭っていく。
腕を上げ、脇の下から胸の下を拭き上げる。少しくすぐったいけれど、ぐったりしている私は抵抗しなかった。
「綺麗だね」
ぽつりと海が呟く。横向きから仰向けに体勢を変えられた私に、小さくキスをする。
「……ごめんね」
私が言うと、海は首を横に振って抱き締めた。細身なのに、しっかりとごつごつした海の体は熱かった。
ゆっくりと腕を動かし、海の背中に回す。心臓の鼓動が背中で感じられる。その鼓動は速かった。
「……抱きたいの?」
「……うん」
「だーめ。また今度ね」
いつもの会話と逆のやり取り。海は、俯くと私の横に寝そべる。
「やばい」
腕で目を隠し、呟く。暗がりでも解るくらい、海の顔が赤くなっていた。
ベッドに海を残して私はシャワーを浴びる。少し不安に思う。少しだけ、私が戻りつつあるように感じた。
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