第1章

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 翌日、いつも通りに仕事をしている。昨日のことは、まるで夢物語。現実味が無く、記憶も朧で、それは私の中では非現実として消化される。 「ねぇ、ちょっと」  初野さん。よく話し掛けてくれる二才年上の同僚。悪い人ではないけれど、馴れ馴れしいところが私は苦手だった。 「あの若い子。ずっとこっち見てるよ」  初野さんが目配せした方に視線を向けると、睨むようにこちらを見ている海が居た。  私が気付いたことに気付くと、真っ直ぐにこちらに向かってくる。 「やだ!ちょっと、えっ!どうしよう!」 「初野さん、私の弟だから。大丈夫ですよ」  そんな会話をしている内に、海は私の目の前に辿り着いている。 「弟!?やっだ!早く言ってよー。刺されるかと思ったじゃない!」  大爆笑している彼女を横目に、海へと視線を移す。 「姉がお世話になっております。今日は四時半で上がりだと聞いたので迎えに来ました」 「あ、あー!そうね、うん、いいわよ!上がって上がって」  頬を奇妙に歪ませる初野奈美の笑顔に悪寒が走る。何も悪いことは言っていないしやっていないのに、こんなにも他人を不快にさせる人間が居るのだ。  彼女との会話で、私は敬語を取ったことはない。
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