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男は、私の胸を枕に、私を敷布団のようにして安らかに眠っている。斜めに置いたクッションが私の背中の下で殆ど潰れてしまっている。
初夏の陽射しは、朝とはいえ容赦なく降り注ぐそれは、私の右腕を焦がそうとしていた。
男を起こさないようにベッドから降りようとしても、すっかり身を任されてしまっていては動きようもなく、仕方なく男を起こすことにする。
「あのー……ねぇ、起きて」
肩を軽く揺すると、ぴくりと反応が返ってくる。
「コーヒー入れるから起きて」
「……もうちょっと」
はっきりとした口調で返事があった。もうちょっと、とは、どれくらいだろう。おそらく一晩中この体勢で寝ていた私の腰は、しくしくと痛んでいる。
考えあぐねていると、男の左腕が上へと伸び、肘を曲げると私の胸を掴んだ。その指は起用に探し当てると、そこを外して優しく撫でてくる。
「ちょっと、やめて」
「ふふ……気持ち良いね」
「……もう!どいて」
手を止めない男を無理矢理起こし、ベッドから急いで降りると、目眩のような感覚にふらついた。
やはり体勢が悪かったのだろう。色々な箇所で血液の流れが悪くなり、痺れている。じわりじわり血流が善くなり、びりびりと痛み出す足を引き摺りながらキッチンへと向かう姿を、男はくすくすと笑って見ているのを知っている。
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