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そう言う私の頭を優しく撫で、私の手をぽんぽんと叩く。
「大丈夫なわけないでしょ。こんなに汗かいて……震えてるし」
誰のせいでこうなってると思っているの。海が私に触れなければ、私が悩む必要はないのに。
動きもせず言葉も発しない私を、海はきつく抱き締めた。首筋に摺より、海の鼻が当たるのが感じてとれる。
「僕……邪魔?」
その言葉にどきりと心臓が跳ねる。確かに邪魔かもしれない。やはり、こんなに綺麗な男が家に居るのは、落ち着かない。
「ねぇ、陸ってさ、自分のことブスだと思ってる?」
「……だって綺麗じゃないもの」
「なんかよく解んないけど、陸、美人なんだよ?」
海の発する言葉を理解したくなかった。美しい、綺麗、美人。そんな言葉は聞きたくない。
「……し、は……じゃ、ない」
「えっ?」
「……わた、しは……綺麗なんかじゃない!」
海の手を振り切り、寝室へと駆け込む。褒められたくない。普通の人になりたい。私がずっと思ってきたことを覆さないで。また、汚い人間になってしまうから。
布団にくるまると、きらびやかに着飾った女が浮かぶ。その女は、高齢の男と腕を組んで、安ホテルへと消える。貼り付けたような笑顔がやけに印象深い。
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