第1章

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 そう言う私の頭を優しく撫で、私の手をぽんぽんと叩く。 「大丈夫なわけないでしょ。こんなに汗かいて……震えてるし」  誰のせいでこうなってると思っているの。海が私に触れなければ、私が悩む必要はないのに。  動きもせず言葉も発しない私を、海はきつく抱き締めた。首筋に摺より、海の鼻が当たるのが感じてとれる。 「僕……邪魔?」  その言葉にどきりと心臓が跳ねる。確かに邪魔かもしれない。やはり、こんなに綺麗な男が家に居るのは、落ち着かない。 「ねぇ、陸ってさ、自分のことブスだと思ってる?」 「……だって綺麗じゃないもの」 「なんかよく解んないけど、陸、美人なんだよ?」  海の発する言葉を理解したくなかった。美しい、綺麗、美人。そんな言葉は聞きたくない。 「……し、は……じゃ、ない」 「えっ?」 「……わた、しは……綺麗なんかじゃない!」  海の手を振り切り、寝室へと駆け込む。褒められたくない。普通の人になりたい。私がずっと思ってきたことを覆さないで。また、汚い人間になってしまうから。  布団にくるまると、きらびやかに着飾った女が浮かぶ。その女は、高齢の男と腕を組んで、安ホテルへと消える。貼り付けたような笑顔がやけに印象深い。
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