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「抜けるもんなら抜いてみやがれ!」
キャーキャーという喚きとも悲鳴ともつかぬ声が車内に撒き散らされ、アコードワゴンのドライバーはひたすらハンドルを右に左に切ってばかり。たてつづけに『たかが』走り屋にしてやられたら、仲間たちからいい笑いものにされてしまう。だから必死だ。
「……」
フルブレーキングから体勢を立て直したCBR900RRのライダーは『ふらつく』アコードワゴンを鬱陶しそうにスモークシールド越しに睨みつける。対向車を恐れてか、右側いっぱいへはいけなさそうで。その隙を見て、その右手に滑り込む。
(ああやられた!)
苦々しそうにアコードワゴンのドライバーは右側に滑り込んだバイクを睨みつけた、ら、同じく向こうの黒いアライのヘルメットこっちを睨みつけていた。
(ぞく)
と悪寒が走った、それから、ライダーの足が動いた。動いた足は、アコードワゴンのミラーを蹴った。
蹴られたミラーは、べきっという音を立てて、宙に浮いた。
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