エピソードⅠ この野郎! その1

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 そういえば、ヒデの白いヘルメットにも赤い火花が散っている。タケシのと妙に似通ったデザインのヘルメットに、互いに。 「パクりやがったな」  と言い合ったのを思い出す。ライディングシューズにジーパンに、赤いライダーズジャケットというスタイル。これもタケシと似通って。互いにライダーズジャケットの肩のところがバタバタして、肩をたたく。  どういうわけかふたりは、バイクは違えどスタイルやセンスが合っていた。  すれ違いざまヒデは、がつん! とブレーキをかけ急停止し、急反転する。 (あいつくんのか)  ヒデが反転するのをミラーでのぞいたタケシは減速してヒデを待った、そのついでに、さっきアコードワゴンにしたように左手を上げて。  中指をおったてる。 「たぁっ! なめてんかあ!」  タケシの中指に感情を刺激され闘志を燃やすヒデ。 アクセル全開をくれたCBR600RRは怒りの雄叫びを上げYZF-R6を追いかけ始める。 「あはは、鬼さんこちら手のなるほうへ♪」  鼻歌を歌いながら、CBR600RRが迫ってくるのをミラーで見てから、こっちもフルスロットル!  二台のステレオなマシンサウンドが一斉に叫ぶ。それはまるで、地面から突然音の噴泉が湧き出たかのようで。それは天にまでも昇りそうだった。  前YZF-R6、後ろCBR600RR。  同じラインをなぞり、同じようなハングオンのライディングフォーム。まるで一本の線でつながっているかのようなランデブー走行だ。このまま走ればひとつになりそうなほど、二台、いやふたりは、同じような走り方をしていた。
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