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それはふたりが一番良く感じていた。とくにヒデはタケシの後ろでその走りを見ているからなおさらだ。
「なんかきみわりいなあ」
ぽそっとつぶやいた。
まさか生き別れになった兄弟じゃねーだろーな、と思ったが。うるさい姉がひとりにうるさい妹が二人いる身としては、これ以上兄弟が増えるなどごめんだった。
てか今はそれどころじゃない。女キョーダイのことは後回しにして、今はタケシを追うんだ。
と自分にはっぱをかける。
ハンドルを握る手の感触、ステップを踏む足の感触、とにかくマシンにふれる身体の部分を通じ、マシンとリンクして。マシンごと風を打ち砕く。
打ち砕かれた風がヘルメットをどつき、たまに目がぶれる。肩もバンバンたたかれまくる。
それでも、アクセルを開ける。開ければ、マシンは吼える。
上がったり下がったりの、黒沢峠の曲がりくねった道をかっ飛んでいる。
その加速、そのサウンド。とにかくすべてがぶつかってきて、景色が吹き飛ばされてゆく、すべてを打ち砕いてゆく。
それが快感だった。
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