エピソードⅠ この野郎! その1

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 それはふたりが一番良く感じていた。とくにヒデはタケシの後ろでその走りを見ているからなおさらだ。 「なんかきみわりいなあ」  ぽそっとつぶやいた。  まさか生き別れになった兄弟じゃねーだろーな、と思ったが。うるさい姉がひとりにうるさい妹が二人いる身としては、これ以上兄弟が増えるなどごめんだった。  てか今はそれどころじゃない。女キョーダイのことは後回しにして、今はタケシを追うんだ。  と自分にはっぱをかける。  ハンドルを握る手の感触、ステップを踏む足の感触、とにかくマシンにふれる身体の部分を通じ、マシンとリンクして。マシンごと風を打ち砕く。  打ち砕かれた風がヘルメットをどつき、たまに目がぶれる。肩もバンバンたたかれまくる。  それでも、アクセルを開ける。開ければ、マシンは吼える。  上がったり下がったりの、黒沢峠の曲がりくねった道をかっ飛んでいる。  その加速、そのサウンド。とにかくすべてがぶつかってきて、景色が吹き飛ばされてゆく、すべてを打ち砕いてゆく。  それが快感だった。
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