28人が本棚に入れています
本棚に追加
折り返しまで来た。
黒沢峠の出口に程近い待避所に滑り込み、今度は駐車場に向かって走り出す。そうすれば、峠に入った他のバイクたちとすれ違う。
黄色いバイクだった。それはGSX-R1000だった。
ふたりが同じタイミングで手を上げ挨拶すれば、むこうも同じように手を上げて挨拶をする。
そしてしばらく走ってCBR900RRとすれ違った。が、CBR900RRには無反応だったし、向こうも無反応だった。
……、っと、いつまでもタケシの後ろにいるのがいやなヒデは、今度ばかりは同じラインを走らず、インから、アウトから、と絶えず隙をうかがっている。
(男のケツ見て喜ぶ趣味はねーんだよ)
と、YZF-R6のリアテールをにらみつける。
そうしているうちに次々と他のバイクたちとすれ違ってゆく。結構多い。今日は多めに来そうだ。
たいしたもので、ふたりはバイクとすれ違うたび、手を上げ挨拶をしていた。
すれ違うバイクの中にグリーンのZX9Rもあったが、何を思ってかCBR900RR同様これは無視したし、向こうもこっちを無視した。
「おうおう、やっとるのう」
とZX9Rのライダー、黒井鉄雄(クロイ・テツオ)がそういったことはもちろん知らない。
それはともかくとして、タケシはヒデをぶっちぎろうとし、ヒデはタケシをぶち抜こうとして。そのままのこう着状態が続く。かと思われたが。
ヒデもさるもの。タケシのYZF-R6がすこしふらついたのを見逃さなかった。
ちと下った左コーナーの突っ込み、ブレーキングをしくじってマシンをふらつかせてしまったタケシ。
「あうっ!」
と、どうにかコケないようにコーナーをクリアした、しかし、突っ込みでふらついてしまい、そのためにスピードをロスしてしまった。
コーナーをクリアすれば上り、なのだが、ミスったせいで立ち上がり加速が鈍い。
「もらった!」
上手にコーナーを曲がったヒデはすかさずタケシのイン、左側に並んだ。次のコーナーはそのまま上ってのまた左。
ということで、次はヒデがイン側だ。
アクセルをあけ、ぶち抜いた歓喜の雄叫びをあげるCBR600RR。
最初のコメントを投稿しよう!