第1章

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 先生の紹介する所だから、ヤバい所では無いはずだ。 「ありがとうございます。本当に困ったら連絡してみます。」 「…あぁ。」  先生はまだしばらく困った顔でいたけれど、俺は笑顔を向けてから一礼して病院を後にした。  病院と家があった場所との間に公園がある。俺はとりあえずそこで、手当たり次第に高校の同級生へ電話をかけた。しかし、今日と言う日は世に言う【お盆】だ。どの家庭でも里帰りで来客がいたり、実家に居て留守だったりと、なかなか宿泊先が見つからない。  とうとう日が暮れ始めた。 「はぁ…。どうするか。」 先生からもらったメモを見つめて悩む。漫喫で今日を凌ぐには難しいだろうか? 「君さぁ…?大丈夫かい?」  不意の事だった。身長は170位の短髪のその人は、キョトンとした顔で俺をみていた。 「はぁ…。」 変な奴と思われただろうか?その人は、男性とも女性とも思える中性的な顔だちだ。 「大丈夫、です。」 「そう?もう3時間はここに居るみたいだからさぁ?」 俺が座るベンチの隣に座り、手にしていたカメラの画像を俺に見せた。一枚目は近くにある噴水の背景に映った俺。二枚目は携帯片手にメモとにらめっこしている俺。 「二枚目は盗撮になるから消すけどさー。」 「あー。…本当に3時間もいたのか。」 カメラの時計機能を見て脱力する。携帯の充電も、そろそろ切れる頃だ。 「あの、…この辺に【ASAOKA】って所はありますか?」 「【ASAOKA】?あるよー?行きたいの?」 「行きたいと言うか、どんな所ですか?」 「マンション。」 「は…?」 その人はマンションと答えて笑う。先生は俺にマンションを買わせる気かよ!?と、心の中でツッコミを入れてしまう。 「【ASAOKA】満室のはずだけど、誰に紹介されたんだい?」 「へ?病院の…倉内先生です、けど?」 「あー。…倉内さんかぁ。」 その人は、しばらく考えてから何かをひらめいたらしく、急に立ち上がった。 「さっ、行こうか?」 「は?ど、どこへ?」 「【ASAOKA】。家無いんだろ?新しい家見つかるまでなら何とかなるからさ!」
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