第1章

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「あの、何で家が無いの知ってるんですか?」 「君、さっき電話で話てたの聞こえたからさぁー。」 その人は、穏やかに笑う。俺の緊張感とか、警戒心とか無意味にさえ感じさせる。 「来ないのかい?」 ベンチの側に置いてある自転車を押しながら歩き始めたその人は、呆けている俺に背中越しに訊ねる。 「い、行きます!」 まだ完全に安心は出来ないけど、とりあえず目の前のその人は信じても良いような気がした。  公園から駅方面に向かう。病院と駅の中間辺りに【ASAOKA】があった。 「…でかっ!!」 「あはははは!!」 でかいと言うか、広いと言った方が正しいだろ。三階建てだが、自分の行く高校ほど広い屋敷だ。 「行くよー?」 屋敷は洋風で、明治頃の建物に見える。 「あっ!そう言えば君、名前は?」 「えっと…。」 「…?あー。金谷夏希だ。よろしく!」 金谷さんは、左手を差し出した。さっきと同じ笑顔で。 「……、天海葵です。」
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