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「あの、何で家が無いの知ってるんですか?」
「君、さっき電話で話てたの聞こえたからさぁー。」
その人は、穏やかに笑う。俺の緊張感とか、警戒心とか無意味にさえ感じさせる。
「来ないのかい?」
ベンチの側に置いてある自転車を押しながら歩き始めたその人は、呆けている俺に背中越しに訊ねる。
「い、行きます!」
まだ完全に安心は出来ないけど、とりあえず目の前のその人は信じても良いような気がした。
公園から駅方面に向かう。病院と駅の中間辺りに【ASAOKA】があった。
「…でかっ!!」
「あはははは!!」
でかいと言うか、広いと言った方が正しいだろ。三階建てだが、自分の行く高校ほど広い屋敷だ。
「行くよー?」
屋敷は洋風で、明治頃の建物に見える。
「あっ!そう言えば君、名前は?」
「えっと…。」
「…?あー。金谷夏希だ。よろしく!」
金谷さんは、左手を差し出した。さっきと同じ笑顔で。
「……、天海葵です。」
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