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俺は抵抗する事なく金谷さんの手を握った。
金谷さんは不思議な人だ。俺の考えている事をわかっているようにさえ感じさせる。
「自転車置いてくるから、ここで待ってて!」
「…はい。」
金谷さんは建物の脇に設備されてある駐輪場へ向かう。建物の前には広い庭があり、その庭の封緘を損なわないような駐輪場がある。建物は鉄格子の柵と門に囲まれていた。
「ドラマのセットみたいだ…。」
呟いてしまう程綺麗な風景だ。
「セットだったんだって!」
「わぁ!!?…っくりしたぁー!!」
「あはははは!!驚きすぎだよ。」
いつの間にか戻って来ていた金谷さんに驚くと、金谷さんは『そんなに可笑しかったのか?』と思う程笑った。
「笑い過ぎです。」
「…ふふっ。…ごめん。ごめん。」
笑いを堪えて謝るその姿が、少し可愛く思える。金谷さんが男性だったら、かなり失礼だろう。
「あー。…行こうか?」
ようやく笑いが治まったらしい。くるりと俺の正面から方向転換をして、木製の大きな扉へ向かう。どうやらあれが玄関らしく、金谷さんは慣れた様子で扉を開けた。
「…早くきなよ。置いていくよ?」
「あっ。はい。」
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