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十五分前
「夕霧さーん! 本番一分前ですよー!」
スタッフが私を呼ぶ。私は一瞬だけ携帯から耳を離してしまった。
「あっ待ってください! すぐ行きます……」
「……じゃあ、仕事がんばれよ」
そう言って電話が切られた。私はどうしようもない焦燥感に襲われ、急いでかけなおす。
彼は出てくれなかった。
何よ、今の。
まるでお別れの台詞みたいじゃない。
あいつらしくない。何を考えているの?
こっちは仕事のこととか、チャットで起こってる宗教がどうのこうのでチンプンカンプンなんだから。
「夕霧さーん!」
スタッフが執拗に呼んでくる。もう時間がない。
私は内心、暗い疑問を抱えたままカメラの前に立った。
共演者はすでに笑顔を作っており、準備万端な様子だ。私も必死に営業スマイルを作り、やがて本番を迎えた。
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