落ちてきたおじさん

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 勤め先である病院から帰宅したとき、山崎烝はレジデンス茜台のベランダから人影が落下していくのを目撃した。  時刻は午後10時である。  山崎烝はあわてた。クルマを運転中、しかも夜でもあったし一瞬のことだったから、何階から落ちたのかはわからなかったが、五階建てのマンションのどこかからであり、高層階なら全身打撲で即死もあり得た。  仕事の疲れも吹っ飛び、マンション前の道路にクルマを止めると、ダッシュした。  レジデンス茜台には一階の住人専用の庭があり、そこに人が倒れていた。103号室の前である。部屋は暗くなっており、寝静まっているのか留守なのかはわからなかったが、いまは不法侵入などかまっている場合ではなかった。  ――そういえば。  山崎烝は、婚約者で同棲している佐藤夕美が言っていたのを思い出した。ベランダから人が降ってきたと……。
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