落ちてきたおじさん

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 山崎は携帯電話で勤務先の病院をコールした。 「すみません、夜分に。山崎ですけど。実は、マンションのベランダから落ちた人がいてるんです。すぐ連れていきますから、受け入れ頼みます。……いえ、外見上は元気なんですけど、検査はせえへんとあかんやろし。……はい、今からぼくのクルマで――」  通話している間にルケルケ・7・トーがマンションの玄関へ入ろうとしていた。 「待ってくださいよ。病院で検査せえへんと――」  腕を取って、引き留めた。 「いや、しかし……」  ルケルケ・7・トーは難色を示した。山崎烝が医者だということは知っていた。立場上、検査を勧めるのも理解できた。だが、ルケルケ・7・トーは地球人に化けた宇宙人なのである。当然、検査すれば地球人でないことが露見してしまうだろう。任務上、それは避けなければならない。  とはいっても、この状況をどう乗り切ればよいだろうか。いくら怪我はないと主張しても、相手は医者なのだからそれが通ることはない。
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