敗北国の悪あがき

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城の構造は複雑ではなかった。 この角を曲がれば…そう考えながら男は顔だけ出して角を除きこむと姫の部屋の前に兵士が一人たっている。 この国の姫の容姿はかなり美しいと言われ。その姫を狙う輩が多いのだろう、姫の部屋の警備が普通の城よりは厳重だ だがしかし、男の目にはその見張りがたいした腕前をもつ兵士には見えなかった。 男は懐から小石を取りだし、警備兵に投げつける。 その小石はうまい具合に兵士の頭に直撃し、しかしさすがに姫の部屋を守る兵士、ダメージがある様子もなく、少し驚いた様子になるがすぐに立て直し剣を引き抜く…ハズだった。 一瞬だけ驚いた、その一瞬の間に男は距離を詰めより、剣の鞘を使い男の首を締め上げ、音もなく意識を無くす。 しかし意識がなくなるその瞬間まで必死でもがき、男の腕に爪痕を残しただけその辺の兵士よりましだなと男は呟いた。 見回りの兵士がやって来るまでに終わらせなければならない、男は一息つくまもなく次は扉に耳をあて中の微かな物音も聞き逃さないようにと意識を集中させ、中の様子を探る。 部屋の中は目立った気配も、大きな物音もせず、聞こえてくるのは小さな寝息くらいだった。 中にいる姫は眠っているのだろう。 男は再び懐に手を入れ、次は布切れを取りだし、ドアノブに手をかけた。 なるたけ音が鳴らないように静かに戸を開け、その隙間から中の様子を確認する。 そこには見張りはおらず、男が想像した通り姫が無駄に大きなベッドの上で一人気持ち良さそうに寝ているだけだ。 男は次に扉を自分が通れるギリギリの隙間ができるまでゆっくりと警戒しながら開いていく。 なにかわずかにでも扉を開く感触が変わったならすぐさま扉を離すつもりで。 それも罠を警戒してのことだ。 勢いよく扉を蹴破り突入して上から刃物が降ってきたならその時点で命が終わる。 もし糸が張られていて少しの振動でどこかの鈴がなる、そんな仕組みでも厄介なことになるのは避けられない。 だがしかし、男の心配は全く無駄だったようで、すんなりと部屋にはいることができた。
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