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これほど手薄なのはどうしてか?
男はもしかしたらハメられているのかもしれないと思いつつ慎重に姫のもとへと歩を進める。
いや、忍び込んでいる時からかなり手薄そうだった。
急に警備を強化してその当日に姫が誘拐されれば怪しまれるのは王自身だ。
まるで誘拐されるのを知っていたのかと、兵からも民からも怪しまれるだろう。
しかしあからさまに警備を緩めるといつ間者に見破られるかもわからない。
だから現状維持にすることこそが俺へのせめてもの助けで、王の尊厳も守られる最適な手段なのかもしれない。
男は既に姫の目の前まで来ていた、罠の気配もなく、その姫の顔も確認できて別人と言うことはなさそうだ。
ラウナ・レヴェーラ
それがその姫の名前だ。
レヴェーラ家の長女であり一人娘。
僅か12歳にして既に美しいと呼べるほどの顔立ちを持っていた。
男はその姿を知っていた。
この城に忍び込んだ時に彼女が召使にワガママを言いまくっていたのはまだ記憶に新しく、その顔とその性格から覚えるのは中々容易かったからだ。
きっと甘やかされて育ったのだろう。
これほど幸せそうに眠る彼女はきっと今自分が誘拐されそうなどと、ましてや国が滅び自らが殺されるかもしれないなどとは微塵も思っていないのかもしれない。
男は持っていた布切れをラウナの顔に押し付ける。
ラウナは少し息苦しそうにするが、すぐにまた、安らかな眠り顔に変わる。
大きな音と衝撃でも目を覚まさないように、男は睡眠作用のある液体を染み込ませた布を押し付けたのだ。
少なくとも翌日の朝、日が高く登るまでは何があろうと眠り続けるだろう。
男はラウナを担ぎ上げ、窓際まで寄ると握り拳を作りそこに意識を集中させた。
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