敗北国の悪あがき

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約二秒ほどそのままでいると男の拳が朱色に小さく光が点りはじめる。 男は目を開くとその光る拳を開き指をパチリと鳴らす。 するとその手の光がまるで球体のようになりその場に浮遊する。 男はその球体をもう三つほど作るとそのすべてを窓の回りに貼り付けるように配置すると窓を開け外を確認する。 今は月が雲に隠れてほとんど前が見えない様子だ、この窓から出たとして、地面は土ではなく石が敷き詰められている、着地は難しいだろうか?。 しかし下には見張りがいない。 男には見張りがいない。それだけでここから飛び降りる理由は十分だった。 ラウナをもう一度抱え直すと窓の額に足をかけ、飛び降りる。 そのまま背中を地面に向け、眠っているラウナは自分の腹の上に移動させて落ちていく。 顔は地面の方に向け、地面との距離を計る。 そしてラウナを押さえている手とは逆の左手は、また赤く光っていた。 そして地面と衝突するそのギリギリの所で受け身をとるのではなく、男はぐるりと身体を左に回して地面と向き合う形になった。 更に身体を回し、左手を大きく地面に叩きつけるように振り払うとその左手から小さな爆炎が上がり、その爆炎がクッションとなり男の身体を数センチほどふわりと浮き上がらせ、体制を整え直すと見事に着地した。 抱えているラウナを確認してみると肌は無事だが服は若干焦げている。 どうやら威力が微量ではあるが強かったようだ。 男はラウナを抱える手を左腕に移すと右手をまたパチリと鳴らすと先程飛び出してきたラウナの部屋の窓が大きな音出しながら爆発した。 その爆発音と共に男は走りだし、出口へ向かう。 時期に兵士が駆けつけてくるだろうが、既にそこはもぬけの殻だ。
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