敗北国の悪あがき

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全力疾走、しかしまだ訓練馬だからだろうか速度がでない。 だが男は問題ないといった表情で暗闇を駆け抜けた。 黒馬の速度を徐々に落とし、赤い玉を大量に着けた馬を先頭にいかせる。 まだそれほど経験がない馬は合図を送っても先頭に着いていかず、自分の側で走り続けている。 「チッ」 男は舌打ちをすると仕方ないかと項垂れながら馬を止まらせ、前を進む馬の群れを確認した。 もうじき敵達も馬の群れに気がつく頃だろう。 少し馬の量が減ったが驚かせるには十分なはずだ。 男は前準備していた弓を構え矢を引いた。 矢尻の向き先はすぐ前にいる馬の群れだ。 限界まで矢を引くと、男は険しい顔をして矢を引く手に力を込める。 すると自分の手に炎が集まりだし、その炎は矢を全体を被った まさしく炎の矢、燃え上がる炎の矢を馬の群れへと打ち込んだ。 赤色の塊は一直線で一番後ろの馬に直撃し、矢が刺さった馬はその炎が一気に体に燃え上がり、さらにくっつけていた球体が破裂しそこからさらに炎が暴れ始める。 そして混乱して燃えている馬が別の馬にぶつかり、引火し、また別の馬に着けた玉も爆発し馬の群れが大きな炎の塊へと変わり、ついに先頭の、大量に魔法玉をつけた馬にも燃え移った。 身体中に付いた玉が一気に爆発し巨大な火柱を作り上げ、頭には炎の角、更に燃え盛るたてがみを揺らしながら全速力で暴れまわる馬に、敵の陣は一気に崩れ始めた。 男は更にもう一矢、次は空に向かって打ち上げる。 高く舞い上がった矢は重力の影響で下を向き、しかし落ちる前に巨大な炎の渦を起こし燃え尽きた。 「頼むぞ」 黒馬に合図を送り、再び全力で走らせる。 訓練馬と言えどなかなかのスピードで暴れ狂う馬たちの脇を一気に駆け抜け、崩れた陣のわずかな隙間に向かって一直線に突撃していった。
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