敗北国の悪あがき

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兵「ディーナ将軍!!」 ディーナ「どうした!?何があったんだ!!」 城の爆発、突然のイレギュラーに警戒してしばらく、次にディーナと呼ばれる将軍に届いた知らせは謎の馬の群れが突撃してきたことだった。 夜の闇のせいでよく現状が飲み込めていないディーナが伝令に来た兵士に声を荒立てる。 兵「馬の群れに突然火がつきはじめて、そして…」 言いかけたところで急に空が赤く光った。 ディーナ「あれは…」 まるで太陽のように赤く燃え上がる炎の渦、そしてそこには巨大な炎に包まれた暴れ狂う馬の群れ。 その先頭の馬には炎の鬣を揺らしながら大きな炎の角が生やし暴れ走る何とも恐ろしい馬の姿があった。 ディーナ「フェルノ・ホースだと…!?」 兵「フェルノ・ホース!?」 ディーナ「あの馬の群れから陣を遠ざけろ!!すぐにあの男を呼んでくるんだ!!」 兵「はっ、ハイ!!」 伝令に来た兵士はすぐさま踵を返し、フェルノ・ホースが現れた部隊の部隊長の元へと向かう。 そしてディーナは振り向き大きな声で指示を出した。 ディーナ「我々も下がるぞ!!引け!引けぇぇぇ!!」 陣は一気に崩れ、炎の馬達に道を開けるようにぽっかりと穴が空く。 だがしかし正体は魔法の炎に包まれパニックを起こしているだけのただの馬の群れ、馬達は散り散りに別れ、陣に突っ込む馬も出てきている。 その影響もあってかさらに陣形は荒れ、穴だらけになってしまっている。 男「なんだ、拍子抜けだな。」 黒馬に股がり、あっという間に陣の穴から抜け出た男は更に馬を飛ばしながら後ろの偽物のフェルノ・ホース達を見ていた。 男「こうも簡単に欺けるならもっと別のやり方があったかもしれないな。」 男は前を向き直し、黒馬のを速度を少しだけ落とし、馬を走らせたその瞬間の事だった。 先程までは後ろから巻き上がっていた炎の明かりが突然消えてしまったのだ。 男「なに…?」 突然消えた炎に驚き、後ろを振り向くがそこにあるのは夜の闇だけ、月は雲に隠れてしまいほとんど前が見えない状況で先ほどまでの燃え盛る馬の群れの気配すら感じられなくなっている。 ゾクリと背筋に寒気が走り、男は馬のスピードをまた上げさせ、走らせた。
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