亡国の力

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怒りを表に出しながら頬をぷくりと膨らませ木々の間を歩くラウナ。 その怒りは時が経つに連れ辺りの自然にかき消されていった。 ラウナ「綺麗…。」 ずっと城の中での生活をしていたラウナ。 庭のしっかりと整備された木々や花とは違い、そこにある全ての木は日光を浴びるため我先にと思い思い自由に伸びている。 しかしラウナにとってはそのなんでもないようなただの森の景色すらも新鮮なのだろう、そのただの森に見とれ始めていた。 ラウナ「お城の庭もこんな感じなら良いかもしれない…今度パパに頼んでみようかしら。」 最早怒ることは忘れていた。 後ろで手を組み今度は楽しそうな様子で獣道を進んでいく。 耳を済ませば風の音と鳥のさえずり、木々の葉が風で揺れてふれあい、サワサワと心地の良い音を奏でる。 ラウナは初めての森を身体全てで感じていた。 最近になってよく聞こえるようになった鉄と鉄がぶつかり合う音や汗臭い男達の掛け声は一切聞こえない。 人工物は一切無い。 なんとも素晴らしい世界、彼女はまるで夢の中にいるかのように錯覚するほど心地よい世界だった。 自分が歩く音ですら自然の音。 耳の中に流れ込んでくる音が心を癒し、穏やかにしてくれる。 だが彼女の心を癒すのは音と景色だけ、森は決して彼女を歓迎しているわけではなかった。 心地よい音の中に紛れ込んでくる雑音、メキメキと木が折れるかのような、磨り潰されるような音が彼女の耳に届いた。 ラウナ「なんの音かしら?」 ラウナはまだ世間を知らない、危険を察知する能力もない。 ただなんとなくという好奇心に支配されその音が聞こえる方向へ歩を進め始めた。
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