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すぐに音の発生源である場所にたどり着いたゼノは腰にある短剣を握り目の前の敵を睨み付けた。
ゼノ「やはりトロルボアーか」
人間の3倍程の大きさの身体、まるで丸太のように太い牙、そして牙の少し上と耳のとなりに眼が二つずつ、計四つの目玉。
トロルボアーと呼ばれるその大猪は七本の倒木に押さえ込まれ身動きがとれずにもがいていた。
ラウナ「ぜ、ゼノ…」
腰が抜けたのか地面に尻をつき膝を震わせたラウナは涙を流しながらゼノを見つめた。
ゼノ「動けないならじっとしていろ!!」
ラウナ「ひ、あう…」
もはや返事もすることもできずラウナは身体を震わせながら小さく頷く。
そんなやり取りをしている間にトロルボアーは自らを押さえ込む倒木を身体を震わせ無理やりどけながら四つの眼全てでゼノを睨み付けた。
ゼノ「流石神話時代から存在する猪だ、受けた魔力の持ち主がわかるのか。」
感心しながら短剣を構える。
トロルボアーの皮膚はそこらの鎧よりも頑丈だ、こんな安物の短剣じゃ逆にこちらの刃が折れて終わりだろう。
だが古より姿形が変わらないだけあって研究も進んでいる。
奴の弱点は…
ゼノ「んっ!?」
考える暇も与えずにトロルボアーは自分を押さえ込んでいた倒木を巨大な牙でくわえてこちらに投げつけきた。
放射線を描きその倒木はゼノの真上へと飛んでくる。
だがゼノもそんな分かりやすい攻撃を貰うほど弱くはない、トロルボアーに突進しその距離を一気に詰め寄り、短剣を持っていない左手から炎を巻き起こした。
だがトロルボアーは怯むことはなく、多少の目眩まし程度にしか効果はなく、しかしその一瞬の目眩ましの間にその巨体の真下に滑り込み右手に魔力を込める。
トロルボアーはゼノが真下に行ったことに気がつかず四つ目をギョロギョロと動かし周りを見ている。
トロルボアーは巨体を動かす事自体に大量のエネルギーを使う。
無駄な動きを省くために敵を捉え逃さないよう前方の標的との距離感を正確に図るための目と、ほぼ真後ろまで見て標的を探るための目の二つがある。
正面、背後、そして頭上は全て見えていると言っても過言ではない、だがしかし、その巨体の真下は無防備。
ゼノは真下こそが死角と知っていたためすぐにスライディングしてトロルボアーの腹元に潜り込んだのだ。
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