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ゼノ「くらえ」
右手から短剣へと魔力移し、炎の魔力を帯びた短剣は赤くに染まる、その剣をトロルボアーの腹へと思い切り突き刺した。
魔力によって生み出された熱はトロルボアーの分厚く固い皮を貫き、焼き切り、内部へと広がり始める。
トロルボアー「ゴアアァァァァァァ!!」
ゼノは短剣だけじゃなく腕を肘までトロルボアーの腹の中へ突っ込みトロルボアーが叫び暴れだす前に右手に貯めた魔力を全てトロルボアーの体内に撃ち放つ。
それはゼノが腹の下に潜り込んで数秒の事。
ラウナの目には突然ゼノが大猪に突っ込み真下へ潜り込み、その後鈍い何かが弾けるような音が聞こえた。
ただそれだけの事だった。
悲鳴を上げる間もなく倒れた大猪の身体の下からもぞもぞとゼノが出てくる。
その右手は赤黒く染まり、ボタボタとその赤黒い液体が地面に流れ落ちている。
ゼノ「怪我はあるか?」
ラウナ「…」
ゼノが問いかけるもラウナは口を開けたまま固まったままだった。
きっと初めてのことだっただろう。
目の前で戦いを見るのも、大猪を見るのも、自分が命を狙われるのも。
ラウナ「あ…」
ふらりとラウナの身体が揺れ、地面に倒れた。
仕方の無いことだ。
室内育ちのお嬢様には、いや、こんな子供がこんな事になれば誰だってこうなるかもしれない。
ゼノはせめて汚れないようにと血がついていない左手でラウナを抱えあげ小屋に戻り始める。
ゼノ「そう言えばトロルボアーは美味いのか?」
今ゼノの頭のなかにあるのは今後ろで倒れている巨大な獲物の利用方法だけで、これから始まる面倒な事は何も考えていないのだった。
ゼノ「牙は高値で売れるだろうな。」
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