敗北国の悪あがき

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その城下町は最早機能しておらず、所々に燃え尽きた家だったものがある。 城壁の回りには海の水のように大量の兵士達。 勝ち目はなかった。 だがどうしてか降伏勧告は無かった。 国王の首一つでこの戦いは終わるはずなのにどうしてか白旗を振ろうと交渉人を送ろうとも、敵は包囲を止めることはなかった。まるで最後の最後まで潰すかのような、互いに全く利点のない訳のわからない行動。 国王は頭を抱え、なんとか民を、国の人間を一人でも守ろうと、最早それしか考えていなかった。 そして呼び出された一人の男。 玉座の間で国王と男二人きり、そこに見張りの兵士は一人もいなかった。 旅の途中たまたまこの国にいてそして偶然にも戦争が始まった。その男はどうしてか兵士にもならずただ戦いの行く末を見ていた。 国王「獄炎の亡者、その名で名高い貴方にお願いしたい。」 男「報酬は?」 国王「仕事内容よりもよりも先に金か…ふん、確かに悪党だ、どうせ滅び行く国の宝だ、好きなものを持っていくがいい。」 男「…」 国王「貴方も既にわかっている事でだろうが敵は狂っている。 この国を跡形もなく潰すつもりに違いない。」 男「そのようだな。で?」 国王「私は考えた。なんとか民を助けられぬものかと、だが私はなんとも身勝手な人間だ。 こんなときにまで一族の血、私の一人娘の心配しかしていない。 私の愛娘、ラウナをどうか、やつらの手の届かない安全な場所へと、逃がしてやってはくれないか?」 男「残念だがそれは無理だ。アンタの娘は有名になりすぎだ、この国が潰れると同時に様々な国が彼女を探し始めるだろう。」 ラウナはまだ10歳の少女であった。 しかしこの国の今は亡き女王、ラウェルは世界でも五本の指に入るほどの美貌を持ち、その一人娘のラウナもまたその美貌の面影が残っているのだ。 このガムルの国とその敵対国、シデルナ王国の戦争理由はシデルナ王国がラウナを姫として要求したのをガムルが拒否したからだった。 男「ラウナ姫はどこに行っても追われる存在になるだろう。 俺が何処に連れていこうとその先で誘拐され奴隷として売られるのが落ちだ。」 国王「…どうしてもダメか?」 男「ああ。俺は姫の執事になる訓練は受けていない。」
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