敗北国の悪あがき

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人々の寝静まる時間、月はほぼ真上を過ぎた頃。 天気が良いとは言えず月は雲に隠れたと思えばまたでてきて少し明るくなるとまた暗くなるのを繰り返していた。 城を囲んだ兵士達は明日か明後日か、その攻める日に向けての準備が着々と整ってきていた。 城を囲み、火矢を放ち、投石し、あらかた町の中は破壊した、後はその弱まった結界で保護されている門をその結界ごと破り城に突入するだけだ。 城を囲う兵は、部隊長は、将軍はまるで余裕だと言わんばかりの勝ちを確信した表情で、しかし大きな油断はせず警戒心は解かずにいる。 兵「ディーナ様!魔導巨砲の整備が整いました!!」 ディーナ「よし、ここまで予定通りだな。」 兵「ええ、しかし国一つ落とす寸前まで全てが順調です。これほど順調なのは少し…」 ディーナ「不安か?」 兵「ああ、いえその…」 ディーナ「いや、不安になるのもわかる。あの男は流れ者だ、もしかしたら罠かもしれないということもある。 だがしかしあの男のお陰で我々の国はここ最近の戦闘は全て勝利に納めている、国王もあの男を信用しているし我々には逆らう理由がないのだ。」 兵「…」 ディーナ「心配するな!あの男のそばにははいつでも監視を置いている、不振な動きを見せればすぐにでもあの首を叩ききってやる。 だからお前はとにかく目の前のことに集中するんだ。」 兵「はっ!」 ディーナは兵士の不安を取り除き、改めて包囲している城を見た。 ディーナ「まるで悪魔の力だな…。」 そう言った後に小さく笑うと同時に、城の一部が大きな音と共に爆発した。 予想外の事態に兵がみな城に視線を向ける。 それはこの戦いで予定に無かったこと、イレギュラーが発生したことの合図だった。
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