敗北国の悪あがき

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玉座の間から出てきて数刻、避難している民は不安そうな表情で寝付けずにいる。 兵士も浮き足立っており、皆が皆不安を隠せずにいる。 包囲されているため逃げようにも逃げられない。 絶望的な状況のなか、夜道を歩く一人の男は不安の表情を微塵も見せず最後の宝を奪う準備をしていた。 男「後は…盗むだけか。」 獄炎の亡者、そう呼ばれた男は月の位置と雲の位置、そして風の方向を確認すると城に向かって移動し始めた。 彼が用意した準備は矢が数本、武器はそれだけ、後は馬の訓練所の場所を確認し、そこから門までの場所を歩いた。 たったそれだけの準備、しかし男には失敗するような雰囲気は無く、どこか逞しくも感じられる。 城の前には門番が二人、最早全てを諦めてしまっているのだろう既に覇気はなく、ただただ突っ立っているだけの状態になっている。 男「よう、情けない顔してるな。」 門番「なっ…何のようだ。」 門番は男が獄炎の亡者と呼ばれていることを知らないらしく、一般市民に偉そうな口を聞かれて図星でもあったのだろう。少しムッとしたような表情をしている。 男「悪いが通させてもらう、俺は家を燃やされた避難民なんでな。」 火矢や投石の影響で家を燃やされたり破壊され、住む場所が無くなった民は城の中に避難することを許可されている。 しかし今は真夜中でいかにもな怪しさが男からは感じられる。 門番「昼間ならまだしもこんな時間に来られてもダメに決まっているだろう、少しは常識を…グアッ」 門番が言葉を続けようとした瞬間に男は素早く刀の鞘を門番の首に打ち付け一撃で気絶させた。 門番2「どうした!?」 暗闇で状況をいまいち把握できていないもう一人の門番が異変に気がつき男のもとへ駆け寄る。 そして男はもう一撃、同じような手つきでもう一人の門番を気絶させた。 男「敗北を前にして諦める奴を兵士とは呼ばない…兵士なら最後まで抗って見せろ。」 男は小さな声で呟き門番を冑越しに頭を足で軽く小突くと城の中へと歩を進めた。
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